愛を教えてくれたスパイダーマン。
オーラの世界のガイドの妖精セリ。
英知の世界のガイドの賢者ミネルバ。
みんないなくなり、ぼくは一人になってしまった気がする。
その夜、フォーカス21に行ってみることにする。"Gateway ExperienceシリーズWave 6 Odyssey<旅>”の"ローカル2への移動/フォーカス21への招待"を聴く。
宝箱、レゾナントチューニング、アファメーションをやり、ガイダンスの声にしたがってフォーカス21を目指す。
ものすごいスピードで上昇する。
フォーカス15を超えたとき、恐怖を感じる。正直に言うと、いつもそうだ。最初にフォーカス21へ行く時の恐怖心は、ぼくの場合は相当のものだった。案外と平気だという人のほうが多いのだろうが……。
フォーカス12、フォーカス15が遠くなっていく。黒い板が回転しているのが下のほうに見える。だがすぐに、それが白い霧にかすんで見えなくなる。
フォーカス21。それはこちら(Here)とあちら(There)の架け橋だ。この世とあの世の境界。 他のエネルギー・システムへと接する場所だ。
フォーカスレベルの紹介するところでも書いたが、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の世界によく似ている。賢治は法華経に身を投じることでフォーカス21に到達していたのだろうとぼくは思う。童話作者や詩人としての賢治は有名だが、仏教者としての賢治はもっと重要だろう。
気がつくと、ぼくは真っ赤なSZに乗っている。SZというのは、ぼくが昔乗っていたアルファロメオ・スプリントザガートというスポーツカーである。箱根のあたりを走っている感じだが、エンジン音は聞こえない。
周囲は真っ白だ。夜である。
「あなたは今、フォーカス21にいます」
ガイダンスのおじさんの声がそう言う。
氷の橋の上にヘッドライトを点灯したままSZが止まっている。周囲は真っ白だ。
一人の僧侶が霧の中に立って、ぼくを見ていた。あ、明恵上人かも、とぼくは思う。彼は穏やかな顔でうなずいた。
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