「第1章 ヘミシンクで知る温かく美しい故郷としての宇宙」より一部抜粋

 ぼくは暗いブースの中に横たわっていた。初めてアクアヴィジョン・アカデミーのゲートウェイ・ヴォエッジのセッションに参加した日のことだ。
 地下のそのセンターにはいくつものブースがあり、音楽仲間や高校時代の友達など三人の男友達と、アメーバブックス新社の三人の女性編集者と合わせて七人が、それぞれのブースに横になっているのだった。
 ヘッドフォンをつけている。
 すでにフォーカス10を経験し、これからフォーカス12へ行くのだ。
 フォーカス12?
 それはどのような場所なのだろうか。
 コントロールルームから流れてくる指示に従い、雑念を捨て意識を集中させる。ぼくはよくメディテーションをやるので、こういうことには慣れている。

 星空が見える。ものすごく鮮明な星空である。
 流星まで見える。
 周囲を見回すと、他の人も同じ程度の高度まで上昇しているようだ。
 ガイダンスの声が流れる。
 これから、フォーカス12へ行くことになる。ガイダンスの声が、ゆっくりカウントしていく。10、11……。
「あなは今、フォーカス12にいます」
 ぼくはいきなりものすごい勢いで上昇し、雲のようなものを突き抜けた。
 それからふんわりと、地面に着地する。光に包まれた昼間の世界である。
 山の上だ。草木はまったくなく、荒涼とした岩肌の上にぼくは立っている。風が強く、それまでぼくを包んでいた雲が流されていく。視界が開けると、真っ青な空と荒涼とした山々が目に入った。遠くに見える峰は雪におおわれている。あれはヒマラヤだろうか。
 空の高い場所に一羽の鳥がいる。イーグルのようだった。翼を広げて、悠々と舞っている。だがそのイーグルが、普通のイーグルと少しちがうことにぼくは気がついた。全身が赤いのだ。深紅と言っていい。ただ眼の周囲だけが黒い。
 その深紅のイーグルが、獲物であるぼくを発見したらしく、ものすごいスピードで降下してくる。恐怖心にとらえられ、身をすくませる。だが逃げる場所などありはしない。
 あっ、と思った瞬間、イーグルはぼくに激突した。
 強い衝撃があったが、痛みは感じない。
 イーグルにつかまれたようで、ぼくは空に浮かび上がる。荒涼とした山肌にそって、下界に降りていく。
 そのときに、気がついた。
 イーグルが両脚でぼくをつかんでいるわけではなかった。
 ぼくがイーグルになっているのだ。あるいは、イーグルがぼくになっている。もう恐怖心はない。空は青い色ではなく、鮮やかなピンク色だ。地平線は暗い。大きな金色の月が出ている。実物の月の十倍ぐらいの大きさだ。

▼BACK