「あとがき」より一部抜粋

 本書の原稿の第一稿を書き終えた頃、短い距離をドライヴする間に、三カ所で交通事故を目撃した。「雨でもないのに事故が多いな、気をつけて運転しないとな」と心を引き締め直した。
 それからしばらくして小さな事件が起きた。財布を落としたのだ。そんなことは初めての経験でぼくはひどく落ち込んだ。
 運転免許証が入っていたので、免許センターにも届けを出しに行った。すると、前年の誕生日に期限が切れていたことが発覚。落とした財布を嘆く気持ちはスッと消え、免許が失効している間に事故を起こさないでよかった、という安堵感がこみ上げてきた。その後学科と実技の試験を受け直し、やっとのことで免許を取り戻すことができた。
 新しい免許をもらって帰る道すがら、あれはやっぱりガイドのセリの計らいだったのだろうとぼくは思った。その瞬間、スパイダーマンがヌッと顔を出した。
「セリじゃない、俺だよ」
「あ、そうだったんですか。それはどうもありがとうございました」
「いろいろシグナルを送ったのになかなか気がつかないんで、財布の中身が少ない日を見計らってやってやったんだよ」
「それは、どうも……。しかし、だったらそう言ってくれればよかったのに」
「なにか言ったか?」
「い、いえ。感謝してます」
 ガイドはそんなふうに、ぼくらを守ってくれているのだと思う。
 あれから妖精セリや賢者ミネルバや鎌倉時代の僧侶とは会っていないが、スパイダーマンは相変わらず時々顔を出す。なにか冗談を言ってはビルの向こうに消えていく。
 繰り返しになるが、ぼくらは孤独ではなく、死後は「無」ではない。
 この宇宙は温かい故郷なのである。
 2012年は、かつてテレンス・マッケナがのべたように「生命が物質という暗いさなぎから解き放たれる瞬間」になるのだとぼくは思う。ただそれは「瞬間」というよりも、既にそうした変化、あるいはたとえば「遺伝子の複雑でトータルな再編成を瞬時のうちに行う」ような進化が始まっているような気がする。


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